- Q.
- A.質問1)への回答
- ●●●懸賞とは?
- ●●●懸賞を規制する法律
- ●●●景品表示法
- ●●●独占禁止法
- ●●●お役所の許可がいらない理由のまとめ
- A.質問2)(景品の制限)への回答
- ●●●景品表示法上における懸賞の景品の限度額
- ●●●独禁法上の懸賞の景品の限度額
- ●●●両者の適用関係
- ●●●取引に付随するか否かがポイント
- ●●●注意点
- ●●●本件への当てはめ
- ●●●結論
- A.質問3)(罰則)への回答
- ●●●最後に一言
| Q. |
1)お役所の許可を得ずに勝手にやってよろしいでしょうか?
2)提供できる商品に制限はありますか?
3)規制に違反した場合、どのようなペナルティーを受けますか?
| A. |
| 質問1)への回答 |
「懸賞」については、公正取引委員会の告示の中にその定義があります。これ によれば、「懸賞」とは、「くじその他偶然性を利用して定める方法」または 「特定の行為の優劣又は正誤によって定める方法」によって景品類の提供の相手 方または提供する景品類の価額を定めることをいいます[1]。
質問者が計画しておられることは、くじ引きで当選者に景品を与えるというこ とですから、「くじその他偶然性を利用して定める方法」によって景品類の提供 の相手方を定める場合に当たります。したがって、公正取引委員会の前記告示に ある「懸賞」に該当することになります。
(1)不当景品類及び不当表示防止法[3]。
(2)私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律[4]。
でも、これらの法律の条文自体には「懸賞」などの言葉は出てきません。そこ で、なぜ、「懸賞」がこれらの法律で問題になるかをざっと見ておきましょう。
これを受けて、公正取引委員会は全業種にわたって適用される一般的告示と、 例えばチョコレート業、チューインガム業といった個別業種に適用される業種別 告示とを出して、過大な景品付き販売を規制しています。この一般的告示の1つ が「懸賞」について定めた先ほどの懸賞制限告示です[6]。
独占禁止法第19条は、「事業者は不公正な取引方法を用いてはならない」と 規定しています。この規定を受けて、公正取引委員会は、一定の事業者(筆者注: すべての事業者ではありませんが)が、顧客を誘引する手段として、一般消費者 に対して一定の行為を求め、「くじの方法又はその内容の正誤若しくは優劣によ り」特定の者を選び、これに「正常な商習慣に照らして過大な金銭、物品その他 の経済上の利益を提供」する旨を広告することを「不公正な取引方法」に当たる としています[7]。この規制の対象となっているのが、いわゆるオープン懸賞と 呼ばれるものです。
| A. |
| 質問2)(景品の制限)への回答 |
その理由は、次のとおりです。
(1)懸賞により提供する景品類の最高額は、懸賞に係る取引の価額の20倍の金額
(当該金額が10万円を超える場合にあっては、10万円)を超えてはならない(懸
賞制限告示第2項)。
(2)懸賞により提供する景品類の総額は、当該懸賞に係る取引の予定総額の2%
を超えてはならない(懸賞制限告示第3項)[8]。
「景品類の提供に係る取引の価額」については、通達によって詳細に定められ ていますが、その一部を紹介すれば、次のとおりです[9]。
(1)購入者を対象とし、購入額に応じて景品類を提供する場合は、当該購入額を
「取引の価額」とする。
(2)購入者を対象とするが、購入額の多少を問わないで景品類を提供する場合や
購入を条件とせずに、店舗への入店者に対して景品類を提供する場合の「取引の
価額」は、原則として、100円とする。
なお、商店街などで共同して行う共同懸賞の場合は、景品類の最高額は30万円。 景品類の総額は懸賞に係る取引の予定総額の3%を超えない額とすることができ ますが(懸賞制限告示第4項[10])、同項はインターネット上での取引を念頭に 入れた規定ではありませんので、インターネット上で懸賞を行う場合、同項の要 件を満たすことは無理です。
これに対して、いわゆるオープン懸賞では最高額が1000万円です。
では、この両者の関係はどうなるのでしょうか?
景品表示法第1条を見てみると、「この法律は、商品及び役務の取引に関連す る不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、私的独占の禁止及び 公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)の特例を定めるこ とにより、公正な競争を確保し、もつて一般消費者の利益を保護することを目的 とする」とあります。
つまり、景品表示法は、独占禁止法の特別法に当たるわけです。
ですから、まず行うべきは、計画している「懸賞」が景品表示法によって規制 されるかどうかの検討です。もし同法によって規制されないことになると、次に 独占禁止法が問題になるわけです。
(1)顧客誘引の手段として、
(2)取引に付随して提供する
(3)経済上の利益
のうち、値引き、アフターサービスなどを除いたものをいいます。
ポイントになるのが、「(2)取引に付随して提供する」ものか否かです。
要は、取引に付随して過大な景品付き販売が行われると、消費者は、商品やサー ビスの価格や品質によってではなく、景品目当てに商品やサービスを選択するよ うになりがちです。また、不毛な景品合戦も起きやすくなります。そこで、景品 表示法は、独占禁止法の特別法として、簡易な手続きで規制が行えるようにして いるのです。
これに対し、オープン懸賞は、応募者を商品を購入した者とか来店した者とか に限定せず、誰でも応募できる懸賞により経済上の利益を提供するものです。会 社や新製品の知名度を高めるための広告手法として用いられています。射幸心を そそり過ぎる度が過ぎた広告を規制すべく、前述の1000万円の上限が定められて いるのです。
懸賞の申し込みを自社のホームページから行わせることを「新聞によって誰で も応募の内容が分かるもの」と見るか、「入店しなければ応募の内容が分からな いもの」と見るかは悩まされるところです。今後、インターネットが新聞と同じ ように普及して、かつプッシュ式の広告により自然に広告が目にとまるようにな る等々の条件がそろえば話は別ですが、現時点では、ホームページでの懸賞の提 供は、「入店者に対する懸賞の提供」と見るのが自然ではないでしょうか?
公正取引委員会も、早く電子商取引を念頭に入れてもっと現実味のあるガイド ラインを作ってくれるといいんですけどね。
なお、景品類の価額の算定は、公正取引委員会の通達(「景品類の価額の算定 基準について」昭和53年事務局長通達第9号)により、次のように行います。
(1)景品類と同じものが市販されている場合は、景品類の被提供者が通常購入す
るときの価格による。
(2)景品類と同じものが市販されていない場合は、その入手価格、類似品の市価
等を勘案して、景品類の被提供者が通常購入することとしたときの価格による。
したがって、非売品を景品とする場合には、その類似品の市価の調査を行った うえで、「景品類の被提供者が通常購入することとしたときの価格」を予想して、 価額の上限を超えないようにする必要があります。
| A. |
| 質問3)(罰則)への回答 |
排除命令が確定したにも関わらず、その命令に違反した場合は、2年以下の懲 役または300万円以下の罰金が科されます(独占禁止法第90条、景品表示法 第9条第1項)。
懲役や罰金を受けるのはよっぽどの場合でしょうが、要は、世間にみっともな い恥をさらすことになるというのが実際上の違反のペナルティーと言えるでしょ う。
[2]民法上も懸賞広告についての規定がありますが (529条から532条)、懸賞の内容の規定ではありませんからここでは触れ ません。また、各種税法にも懸賞に関する規定がありますが、ここでは触れませ ん。
[3]昭和37年5月15日法律第134号。最新の改 正は、平成5年11月12日。以下、「景品表示法」。
[4]昭和22年4月14日法律第54号。最新の改正 は、平成5年11月12日法律第89号。以下、「独占禁止法」。
[5]地頭所五男編「新しい独占禁止法の実務」(19 93、社団法人商事法務研究会)485頁。
[6]一般的告示には、懸賞制限告示のほか、「一般消 費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」(昭和52年3月1日公正取引 委員会告示第5号。最新の改正は平成8年2月16日公正取引委員会告示第2号。 以下、「総付景品制限告示」)があります。
[7]「広告においてくじの方法等による経済上の利益 の提供を申し出る場合の不公正な取引方法」(昭和46年7月2日公正取引委員 会告示第34号)全文については、 http://www.jftc.admix.go.jp/guidline/ を参照
[8]「懸賞に係る取引の総額」とは、「懸賞販売実施 期間中における対象商品の売上予定総額」をいう(「懸賞による景品類の提供に 関する事項の制限」の運用基準について(昭和52年4月1日事務局長通達第4 号。最新の改正は、平成8年2月16日事務局長通達第1号。以下、「懸賞制限 告示の運用基準」)第7項。
[9]懸賞制限告示の運用基準第5項、および「一般消 費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」の運用基準について(昭和52 年4月1日事務局長通達第6号。最新の改正は、平成8年2月16日事務局長通 達第1号)第1項。
[10]前二項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる
場合において、懸賞により景品類を提供するときは、景品類の最高額は三十万円
を超えない額、景品類の総額は懸賞に係る取引の予定総額の百分の三を超えない
額とすることができる。ただし、他の事業者の参加を不当に制限する場合は、こ
の限りではない。
一 一定の地域における小売業者又はサービス業者の相当多数が共同して行う場
合
二 一の商店街に属する小売業者又はサービス業者の相当多数が共同で行う場合。
ただし、中元、年末等の時期において、年三回を限度とし、かつ、年間通算して
七十日の期間内で行う場合に限る。
三 一定の地域において一定の種類の事業を行う事業者の相当多数が共同して行
う場合
[11]「広告においてくじの方法等による経済上の利 益の提供を申し出る場合の不公正な取引方法の指定に関する運用について」(昭 和46年7月2日事務局長通達第5号。最新の改正は、平成8年2月16日事務 局長通達第1号)全文については、脚注[7]と同じ。
[12]「不当景品類及び不当表示防止法第二条の規定 により景品類及び表示を指定する件」(昭和37年6月30日公正取引委員会告 示第3号)以下、「景品類指定告示」。
[13]脚注[5]「新しい独占禁止法の実務」503頁。