(1)「その他通商産業省令で定める事項」は、通商産業省令第9条の2で次の
ように定められています。
1)商品の性能若しくは効能、役務の内容若しくは効果又は権利の内容若しくは
その権利に係る役務の効果[(1)]
2)商品、権利又は役務についての国又は地方公共団体の関与[(2)]
3)商品の原産地若しくは製造地又は製造社名
4)訪問販売法第8条各号に掲げる事項[(3)]
(2)虚偽又は古代広告の基準として「事実に相反する」と「実際のものよりも
優良又は有利であると人を誤認させる」の2点があげられていますが、いずれ
も「著しい」場合のみを対象としています。これは通常の商取引においてある
程度の誇張がなされるのはよくあることで、顧客においても当然予想しうるか
らです。
(3)誇大広告であるか否かの判断は、専門的知識を有するものの判断ではなく、
一般消費者から見て誤認するような表示であるか否かによります(通商産業商
産業政策局消費経済化「平成9年版訪問販売法に関する法律の解説」(以下"
解説")146ページ)。
3.2.2 罰則
訪問販売法第8条の2に違反して、虚偽又は優良と誤認させるような広告を
した者に対しては、50万円以下の罰則が科されます(訪問販売法第23条第
3号)。又、業務停止命令などの対象となります(訪問販売法第9条の2及び
第9条の3)。
このようなケースにおいて、顧客と加盟店の間に場合にトラブルが生じた場 合に管理業者が法的責任を負うでしょうか?以下、加盟店が顧客に対してどの ような責任を負うのか、次に、加盟店の行為の結果について管理業者が法的責 任を負うことがあるのかについて検討してみましょう。
判例通説は、不特定物売買(そのものの個性に着目してなされるのではない
売買。大体の目安としてはそのものが滅失又は毀損したときに当然に「変わり
のものをもってこい」と要求できるのが不特定物です。通常の新品の物の売買
はほとんどすべて不特定物売買になります)の場合、売主には完全な物の引渡
しをする義務があると解されています。売主がこの義務に違反した場合、債務
を履行しなかったことについて売り主に帰責性がある場合は、売主は、買主に
対して、債務不履行に基づく損害を賠償する責任を負います(民法415条)。
では、加盟店が顧客との売買契約において債務不履行をした場合に、顧客にど
のような損害が生じるのかについて検討してみましょう。
5.1.2 加盟店の売買契約の債務不履行により顧
客に生じうる損害
5.1.2.1 通常損害
例えば、届けた商品が壊れていた場合や商品が届かない場合のような、引渡
し義務の不履行の結果そのものといえる損害です。このような場合は、原則的
には売主である加盟店が責任を負うことになりますが、後述のように、管理業
者に何らかの責任が認められるような場合であっても、新品を加盟店の代わり
に商品を納品すれば済みますから、負担しなければならない金額はそれほど大
きくないことが多いでしょう。
5.1.2.2 拡大損害
拡大損害とは、売買契約の債務不履行に起因して損害が生じる場合です。例
えば、スーパーで主婦好酸が買ったとうふが腐っていて、それを冷や奴で食べ
た甲さんとその夫乙さんが食中毒で7日間ずつ入院してしまったような場合で
す。
拡大損害は、
1)損害の額が予測できず金額自体も非常に大きくなる可能性があり、
2)加盟店について一定の審査をしていたとしても不可抗力的に発生する危険性
がある
ことから、管理業者が最も注意を払わなければならないものといえます。
残念ながら、ネット上のモールに関する事案で、このような場合の管理業者
の責任について裁判所の法的判断が示された裁判例はないようです。したがっ
て、この問題を検討するに当たっては、モールに類似する既存の制度における
類似事案に対して裁判所の法的判断が示された例を参考にするしか方法があり
ません。モールの管理業者と加盟店に類似した既存の制度としては、デパート
やスーパーなどとそのテナントが考えられます。スーパーのテナントが販売し
た物から発生した拡大損害に対するスーパーの責任について、最高裁の判断が
示された例(平成7年11月30日最高裁第一小法定判決、以下、"最判")
がありますから、この判例を参考に、管理業者の責任を検討してみましょう。
5.2.1 最判の事案の概要
X1(原告)は、Y(被告。後にY'が訴訟継承)が営むスーパーの屋上をテナ
ントとして賃借してペットショップを営んでいるAからインコを購入し、自宅
の居間で家族とともに飼育していた。ところが、本件インコがオウム病クラジ
ミアに感染していたため、家族が次々と感染し、訴外B(X1の母)がオウム病
性肺炎を発症して死亡し、X2(X1の父)も同じ病気により10日間の入院加
療を余儀なくされた。X1及びその兄弟であるX3及びX4も風邪のような症状
を呈し、検査の結果、X3はオウム病であると診断された。
X1~X4が、Yを動物占有者の責任、一般不法行為責任、契約責任、商法2
3条の名板貸人責任に基づき提訴。名板貸人責任以外の請求原因については実
際に販売した売り主がAであることを理由にいずれも否定され、Yの名板貸責任
が争点となった。
5.2.2 名板貸責任とは?
商法23条は「自己ノ氏、氏名又ハ商号ヲ使用シテ営業ヲ為スコトヲ他人ニ
承諾シタル者ハ自己ヲ営業主ナリト誤認シテ取引ヲ為シタル者ニ対シ其ノ取引
ニヨリ生ジタル債務ニツキ其他人ト連帯シテ弁済ノ責任ニ任ズ」と規定してい
ます。この規定は、商号自由主義と外観を信頼した第三者の保護との調整をは
かるために、禁反言の法理と同じ思想から定められた規定です[(7)]。
他人に
自己の商号などの使用を認めることによって、自分が取引の主体であるような
紛らわしい外観を作出したものは、その他人と外観を信頼して取引した第三者
に対して、自分が取引したのと同じ責任を負うことになります。
5.2.3 裁判の経過
本件は、一審の横浜地方裁判所では、Yに名板貸責任の類推適用
[(8)]が認められ
てXが勝訴し、二審の東京高等裁判所では、逆に営業を誤認させる外観が存在
しないとしてYが勝訴し、X1らが上告しました。一審二審とも認定した事実関
係は同一であるにもかかわらず、評価が正反対となってしまったため、最高裁
の判断が注目されていました。
5.2.4 最高裁の判断
破棄差戻し(X勝訴)。
以下の1)2)8)9)の事実を、Aの営業があたかもYの営業の一部門であるかのよ
うな外観を与える事実であると認定し、その後、以下の4)5)6)7)の事実が買い
物客が営業主体を認識するのにどのような影響を及ぼすのかを検討し、結局営
業主体を識別できるとはいえないとして外観の存在を認定しました。そして、
Yが、本件店舗の外部に商標を表示したことおよびAとの間で出店契約を締結し
たことによって右外観の作出に関与していたことを理由に、Yは商法23条類
推により名板貸人と同様の責任を負うと判断しました。
1)Yはチェーンストア形式による総合小売業などを営む株式会社であり、K市に
おいて地上4階建て(屋上あり)のスーパーマーケットを営んでいた。Yは本
件店舗内に直営の売場を設けるほか、いわゆるテナントに出店させていた。
2)本件店舗の外部には、Yの商標を表示した大きな看板が掲げられており、テ
ナント名は表示されていなかった。
3)YとAの出店契約および店舗使用に関する契約においては、(1)Aは、店舗の統
一的営業方針および出店者間の合理的均衡を維持するため、Yの承諾した取扱
品目(ペット)について営業するものとし、Yの承諾なしにこれを変更するこ
とができないこと、(2)賃料は、一定額の固定賃料と売上高を基準とした変動
賃料からなり、その支払方法は、YがAの売上金を毎日管理し、これから賃料、
共益費その他の諸経費を控除してAに返還するというものであること、(3)Aは、
営業時間、休業日、商品物品の搬入搬出、清掃、従業員の就業等、日常の営業
行為またはその付随行為につき、Yが定める店内規則を遵守し、店内規則に定
めのない事項についてはYの指示に従うこと、などが定められていた。
4)Yの本件店舗には、約12のテナントが入っていたが、店内数箇所に設けら
れた顧客案内用の館内掲示板には、Yが販売する商品の種類が黒文字で、その
右横にテナント名が青文字で表示され、RF(屋上)の部分には、青文字で「プ
レイランド」および「ペットショップA」と表示されていた。
5)Aを含む各テナントの賃借部分の前には、天井から約40センチメートル、
縦約30センチメートルのテナント名を書いた看板がつり下げられていた。
6)本件店舗のY直営の売場では、原則として、いわゆるスーパーマーケット販
売方式(顧客が、スーパー専用の買物かごを持ち、購入する商品を買物かごに
入れ、その階のレジで代金を一括して支払う方式)で営業されていたが、Aな
どのテナントの売場では、それぞれ独自のレジを設け、対面販売法式で営業を
行っていた。
7)本件店舗のY直営の売場では、原則として従業員が制服と名札を着用してい
たのに対し、Aにおいては、Yの制服や名札を着用せずに、また、「Aペット」
と表示されたレシートを発行し、包装紙や代済みテープもYのものとは異なる
ものを使用していた。但し、Aは右レシートの発行のほかには、自己の名称を
積極的に表示することはしていなかった。
8)本件店舗の屋上では、Aがペットショップを経営していたほかは、テナント
である秋坂紹介が経営するプレイランドと称する子供用遊戯施設が設けられ
ていただけであり、Y直営の売場はなかった。そして、店内の4階から屋上に
上がる階段の上り口に設置されたプラスチック製屋上案内板には、比較的大き
な赤文字で、「屋上遊園地、ペットショップ」と表示され、また、右階段の踊
り場正面の壁には、樹木をかたどった模様の中に比較的大きな青文字で同様の
表示がされており、いずれもテナント名の表示はなかった。
9)Aは、Yから賃借していた契約場所をはみ出し、4階から屋上に上がる階段の
踊り場などに値札を下げた商品を置き、また、契約場所以外の壁に「大売出し」
と大書した紙を何枚も貼り付けるなどしていたが、Yは、これを黙認していた。
5.2.5 最高裁の判断の分析
最高裁の判断は、営業主体を混同させるような外観が存在し、営業主体とし
て誤認されている者がその外観を作出したことに責任があるのであれば、その
外観を信用して取引を行ったものに対しては責任を負うべきであるというもの
です。この考え方は、外観が存在し、第三者がその外観を信用して取引をした
場合には、第三者の信頼を保護するというもので、このような考え方は、「外
観法理」と呼ばれています。
これに対して、Yの責任の根拠として、Yがペットショップから固定賃料と毎 月の売上にリンクした賃料を取っており、ペットショップの販売行為により利 益を得ていたのだから、ペットショップの販売行為から発生した損失について もYが責任を負うべきであるという考え方もあります [(9)]。 "利益のあるとこ ろに負担も帰する"とするこのような考え方は、「報償責任」と呼ばれていま す。
理論的には、外観法理はあくまでも外観の存在と第三者の外観に対する信頼 を基準とする考え方であり、当事者の内部関係(最判の事例の場合、Yとペッ トショップAのテナント契約の条件)は、外観作出の責任を判断する範囲でし か考慮されないことになります。他方、報償責任の考え方は、利益のあるとこ ろに損失が帰するという考え方ですから、当事者の内部関係においていかに一 方当事者が他方当事者の行為によって利益を得ていたかが責任の根拠となりま すから、当事者の内部関係が重視されることになります。
最高裁は、外観法理の考え方を採用していますから、判決の理由においては、 営業主体の混同を招くような外観が存在するかという観点から事実の評価を行っ ています。