これらのデータを弊社で運営するサーバ一に置くのを放置していた場合、それ らに対して、なんらかの法的な措置が講じられたとして、それらの法的措置が 弊社に及ぶリスクがあるのでしようか?
もし、そうであれば、それらのデータを排除するような措置をユーザーにとら ねばいけないのですが……。
(2) では、ホームページ上に著作物が掲載された場合、誰が著作物をコピーし たり公衆に送信したことになるのでしようか? プロバイダーの菅理するサーバー 上にデータや画像が蓄積されている以上、プロバイダ一が著作権侵害の責任を 負うことになるのでしょうか?
a. プロバイダーがあるユーザーからデータや画像が蓄積されているフロッピー ディスクを受けとって、これを自分のサーバー中の当該ユーザー用のスペースに 蓄積した場合には、「コピーしたり、公衆に送信したりしているのは、プロバイ ダーだ。だから、プロバイダーが著作権侵害の責任を負うべきだ!」等と言われ る可能性は相当高いでしょうね。そうすると、プロバイダーは、著作権者から差 し止めの請求を受け、さらに、著作権侵害をしていることを知っていたり、知ら なかったことについて過失があったりすれば、損害賠償の責任も負うことになっ てしまいます。
b. では、プロバイダーは単にサーバー中の一定のスペースを貸しているだけで、 ユーサーがリモートアクセスして、白分でデータや画像をアップロードしている 場合はどうでしょうか(現在は、ほとんどの場合、各社ともこのような方式をとっ ています)。
この場合には、おそらく、「コピーしたり公衆に送信したりしているのはユー ザーであって、プロバイダーはスペースを貸すことによって、それを事実上容 易にしていたにすぎない。特段の事情のない限り、プロバイダーか責任を負う ことはない」と考えられることになると思われます。 【1】 しかし、そうした問題があることを知っていたのに、漫然と放置していた場合 には、「プロバイダーも共同して著作権侵害をしたことになる」 【2】 などと主張される恐れは十分あります。プロバイダーとしては、何らかの対策 を講じておく必要があります。具体的には、会員規約等で他人の著作権を他人 の著作権を侵害するデータ等の掲戟を禁止するのはもちろん、「著作権侵害を 構成するものと疑う合理的な理由があるものとプロバイダーが判断した場合に は、やむを得ずアクセス制限をしたり、当該データ等を削除したりすることも ある」旨を明らかにしておくべきでしょう。といっても、実際には、果たして 本当に著作権侵害を構成するのか否かを判断するのはかなり困難だし、第三者 からクレームがあったからといって、直ちにそのデータを削除してしまうのも、 場合によってはユーザーの表現の自由を不当に奪うことになって、問題ですの で、悩ましいところではあります。【3】 プロバイダーとしては、ユーザー向けのガイドラインを作成するなどして、啓 蒙活動に努め、ユーザーによる著作権侵害行為が生じないように十分配慮する ようにしておくのが適当であろうと思います (こうした方策をとることは、ユー ザーが、著作権法の理解不足から、意図せずに著作権侵害の責任を問われるこ とがないように配慮することにもなりますよね)。また、著作権者であると主 張する者から、クレームがあった場合には、真摯に事実関係を確認し、合理的 な疑いがある場合には、一時的にアクセスを制限したりすることも検討する必 要があります。【4】
【2】 たとえば、著作権者(具体的には、その団体である日本音楽著作権協会 「JASRAC」)の許諾を受けずに力フオケ店を経営していた者に力ラオケ機器を リースしていたリース業者が、著作権侵害に基づく共同不法行為の責任を問わ れた事例があります。もっとも、このケースでは、リース料は、カラオケ店の 収益に応じてその額が決まる、いわゆるパーセンテージ・リースと呼ばれる方 式で算定されることになっており、また、問題のリース業者は、JASRAC の許 諾を受けずに力ラオケ店を経営することを支援していたような状況もあったよ うで、特殊な事案と言えるかもしれません。また、 脚注1の Netcom の事件でも、Netcom が侵害行為を認 識しており、侵害行為に実質的に関与していた場合には、寄与侵害の責任を負 うことはあり得る旨判示されています。
【3】 こうした点を考慮して、米国では、ネットワーク運営者の責任を免除し、また は、制限する立法的な解決を図るべきである、との意見も主張されています。 しかし、Information Infrastructure Task Force「IITF」の Working Group on Intellectual Property Rights が、1995年9月に発表した報告書において は、以下のような趣旨の報告がなされています。
(1) 免責や責任の限定を望むサービスプロバイダーは、(a) システム上で流通 する素材の量はあまりに膨大であり、監視したり、審査したりすることは不可 能である、(b) 監視しようとしても、侵害物を識別することはできない、(c) サービスプロバイダーを保護しなければ、情報の流通及び提供が阻害される、 (d) サービスプロバイダに資任を負わせれば、事業が成り立たなくなり、NII も実現不可能となる、(e) 利用者の行為について責任を引き受けたサービスプ ロバイダーにのみ責任を負わせるべきである、と主張している。
(2) しかしながら、写真の現像業者、書店、レコードショップ、新聞の販売所、 コンピュータソフトの販売店等も、実際にその取り扱う素材の内容を吟味するこ とはできないにもかかわらず、厳格責任に服している。
(3) また、オンラインサービスプロバイダーは、侵害の存在を通知された場合 には、削除その他の適切な措置を講ずることができる。
(4) オンラインサービスプロバイダーは、NII の進展に不可欠の役割を果たす ものであるが、だからといって、著作権侵害の責任を免除したり、軽減したり する理由とはならない。著作権侵害を行い、または、著作権侵害を助長するこ となく、その役割を果たすことは可能であるからである。
(5) オンラインサービスプロバイダーは、利用者と営業上の関係を有しており、 利用者を特定し、利用者の活動内容を知り、さらに、利用者の違法な行為を中 止させ得る立場にある。おそらく、オンラインサービスプロバイダーのみがそ うした立場にあるものと言えるであろう。たしかに、利用者からの損失補償 "indemnification" によっては、十分な損害の補填をすることはできないかも 知れないし、その他の措置を講じようとすれば、事業運営の費用を増加させる ことになるだろう。しかし、オンラインサービスプロバイダーは、侵害を防止 し、侵害を中止させるうえで、著作権者よりも有利な立場にある。こうした点 を考慮すると、サービスプロバイダーに責任を負わせるのが最良の政策である。
(6) サービスプロバイダーは、侵害行為により利益を得ているのであって、責 任を負わないものと議論するのは困難である。
(7) The Working Group は、NII の環境下でのサービスプロバイダーの責任を 軽減するのは早計であると考える。サービスプロバイダーの種類は多様であり、 一つのルールによって、対応することはできない。事業者によっては、たとえ ば、電話会社のように、単に、導管としてのサービスを提供しているにすぎな い場合もある。その場合には、一般の運輸業と同様の立場に置かれていて、か つ、人についても内容についてもコントロールできないのであれば、確かに免 責の主張にも理由がある。暗号化された侵害物を知らずに送信した、オンライ ンサービスプロバイダーの責任も同様に考えることができる。
(8) 責任を負担することを拒否することによって、自らの責任の範囲を決定さ せることは、不公正であり、かつ、危険である。こうしたことを認めれば、意 図的な無視を助長することになってしまう。
【4】 当初はそうした事実を知らなかったとしても、クレームがあった以降について は、プロバイダーに故意又は過失があると判断されて、それ以降の損害の賠償 を請求されることになってしまう恐れもあります。
(2) もちろん、著作権侵害の場合と同様に、プロバイダーの知らない間にユー ザーがリモートアクセスして、自分で問題のメッセージを掲載していた場合に は、プロバイダーが名誉毀損の責任を問われるものとは考えがたいと思われま すが、「名誉毀損だ!」等とクレームを受けて、その事実を知っているにもか かわらず、漫然と放置していた場合には、名誉毀損を手助けしていると見なさ れて、刑法上の「幇助罪」の責任を問題とされたり、損害賠償を請求されたり することもあり得るので、注意が必要です。【6】
【6】 米国では、一般に、名誉毀損を構成する内容の書籍を出版した者 "publisher" は、無条件で名誉毀損の責任を負うが、書店や図書館等の書籍のディストリビュー ター "distributor" は、名誉毀損が問題となっていることを認識し、または、 認識すべき理由があった場合にのみ、名誉毀損の責任を負うものと考えられて います。これは、ディストリビューターは、受動的な導管 "conduit" にすぎ ず、何らかの落ち度 "fault" がなければ、責任を負わせるのは適当でない、 という考え方に基づくものです。Stratton Oakmont, Inc. v. Prodigy Servs. Co., No.31063/94, LEXIS229, (Sup.Ct.N.Y. May24, 1995) においては、この 法理に基づいて、ネットワーク運営者が名誉毀損の責任を負うものと判示して 話題になりました。この事件は、 Prodigy のネットワーク中の "Money TaIk" という電子掲示板に掲戴された発言が、証券投資銀行である原告の名誉を毀損 するものであったとして、当該電子掲示板サービスを運営していた Prodigy が訴えられたものです。裁判所は、Prodigy が、電子掲示板の内容をコントロー ルしている旨表明していたこと、電子掲示板の内容をチェックするためのソフ トウェアやガイドライン等により実際に内容をコントロールしていたこと、等 を強調して、Prodigy が出版社としての責任を負うものと判示しています。一 方、日本では、1994年に、NIFTY-serve 中のあるフォーラムで、会員Aが、会 員Bから名誉を毀損する発言をされた、として、会員Bと NIFTY-serve を提訴 した事件が起きました。原告側は、NIFTY-serve は、原告の要請にもかかわら ず、問題の発言を削除しなかったこと等を理由として、NIFTY-serve は、会員 の安全に配慮すべき義務に違反している旨を主張しているとのことです。裁判 所がどのような判断を示すか、注目されます。
(2) 「わいせつ」な画像が掲載されたからといって、具体的に誰かの権利を侵 害した、ということにはならないので、損害賠償の責任を問われることはまず 考えられないのですが、警察当局のほうは、インターネット上での「わいせつ」 画像の掲載を相当問題視しているようであり、積極的に捜査、摘発に動いてい ます。したがって、プロバイダーの施設が家宅捜索されるようなケースは、今 後もあり得るのではないかと思われます。家宅捜索の対象となった場合には、 突然捜査官がやってきて、大量に資料を持っていったり、 【9】担当者が長時間事情聴取を受けたりと大変な不都 合が生じますし、「わいせつ」画像が掲載されているのを知りながら漫然と放 置していた場合には、今度は幇助罪の責任を問題とされることもあり得るので、 相当なリスクがあると言わざるを得ません。
(3) では、どのような対策を講じておくべきなのでしょうか。
a. 実際にそうした画像が掲載されていることを知った場合に、ユーザーに対 する警告、データの削除、退会処分、その他の合理的な対応を速やかに取って おけば、幇助罪の責任を問われることは考えられないのですが、(a) そうした 画像等が掲載されていないかどうかを監視すべきかどうか、(b) 監視しておい た方がいいとしたら、どのような体制を取っておけばいいのかは、かなり困難 な問題です。警察の家宅捜索の対象となったりすることを防ぐ意味からは、で きる限り子細に監視するようにするのが適当なのでしょうか、実際上、日々更 新される膨大なページをくまなくチェックするのは不可能ですし、URL をユー ザーが一般に公開していないような場合には、電気通信事業法上の「検閲の禁 止」や「通信の秘密の保護」【10】と抵触する疑いも あるので、対応には相当苦慮することになってしまいます。
b. しかし、そもそもプロバイダーは、自分の施設上で、ユーザーが犯罪行為 を行なっていることまで想定して、監視体制を取っておくべきなのでしょうか? 「家主は、借り主が部屋の中でなにか悪いことをしていないかどうか、始終の ぞいてもいいんだ。のぞいていないと家主が幇助の責任を問われることになる」 とは、誰も思わないでしょう。逆にそんなことをすれば、プライバシーの侵害 が問題となったりしますよね。では、サーバーを貸しているに過ぎないプロバ イダーの場合は、家主の場合とどこが違うんでしょうか?
今後、立法的解決、少なくとも、行政実務上の明確化が強く望まれるところで す。【11】
【8】 実際に、今年の9月末に、広島のあるプロバイダーが猥褻物公然陳列罪の容疑 で書類送検される事件が起きました。ただこの事件では、プロバイダーが問題 のページを、アクセス回数の多いページとして紹介していたような事情がある ようであり、単に自社の管理するサーバー上に猥褻画像データが蓄積されてい たことのみを根拠として、責任を問われたわけではないようです。
【9】 一部の報道によると、前記の大手プロバイダーの家宅捜索の際には、警察当局 は、サーバー自体を押収しようとしたと言われています。もっとも、事情を説 明のうえ、被疑者のデータをフロッピーにコピーして提出することによって、 了解してもらったとのことでした。
【10】 電気通信事業法第3条には、「電気通信事業者の取扱中にかかる通信は、検閲 してはならない」と規定されており、同法第4条第1項には、「電気通信事業者 の取扱中にかかる通信の秘密は、侵してはならない」と規定されております。
【11】 米国では、1996年2月8日に、いわゆる1996年通信品位法 "Communications Decency Act of 1996" か成立しましたが、この法律には、18歳未満の者が受 信することを知りながら、わいせつな "obscene" 、または、淫らな "indecent" な画像等を送信したり、18歳未満の者がアクセスしうることを知 りながら、明らかに不快な "patently offensive" 態様で性的行為等を描写し た画像等を表示することを禁止した条項が含まれていました。この法律は、憲 法上保障された表現の自由を侵害するものとして、法案の段階から問題とされ ていましたが、ペンシルバニア州及びニューヨーク州の地方裁判所が、相次い で、同法が憲法に違反するものである旨判決を下し、注目を集めています。