弁理土 松倉秀実
Hidemi Matsukura
というわけで、今回は読者からの質問もないのに、私「ひで松」が強引に編集 部に圧力をかけてこの話題を取り上げさせてしまいました。実は予定していた 画像関連の著作権問題のテーマを担当する予定の寺本弁護士と宮下弁護士が夏 休みに入ってしまって雲隠れしているのが真相だという噂もありますが…。
インターネットではお互いのコンビユータを認識するためにIPアドレスという 数字を用いています。これは32ビットで構成された数値列で、たとえば 「133.168.XX.XXX」という番号で表記されます。これは全世界で唯一の番号が 付与され、この番号だけでそのネットワークが持定されるわけです
しかし、この数字列だけでは電子メールなどのやりとりには不便なので、ドメ イン名という慨念か登場しました、ドメイン名は、「fujitsu.co.jp」とか 「asahi-net.or.jp」「niftyserve.or.jp」などのように表現されます。
ピリオドで区切られた最初の部分「fujitsu」「asahi-net」や「niftyserve」 の部分は組織名を表します。この部分を最も狭い意味でのドメイン名というこ とが多いようです。次の「or」や「co」は組織の属性を表します。たとえば 「co」であれば企業、「ac」は研究機関、「ad」はネットワーク管理団体、 「go」は政府、「or」であればその他の団体を表すようになっています。
最後の「jp」は日本を表しています。なお米国はインターネット発祥の国であ るため、「us」が省略され、「com」と表されることが多いようです。
以上のことから、ドメイン名を見れぱそのネットワークがどのようなものかあ る程度の推測がつくことになります。たとえぱ「fujitsu.co.jp」であれば日 本 (jp) にある富士通 (fujitsu) という企業 (co) であるというような具合 です。
さて、これらのドメイン名に所属している個人は、このドメイン名の下に付与 されたアドレスが割り当てられて電子メールのやりとりが可能になるわけです。 このアドレスは下記のように表記されます。
gv8h-mtkr@asahi-net.or.jp表記の「gv8h-mtkr」の部分はパソコン通信でいう ID に該当し、所属する組 織から付与されたものです。また次の「@」はアットマーク (またはアトマー ク) と呼ばれており、それに続く表示はドメインであることを表しています。
したがって、上記のアドレスからは、日本にある ASAHI ネットというネット ワークの下にある「gv8h-mtkr」という ID であることがわかるわけです。
また、ドメイン名はホームページのアドレスにも使われます。ホームページの アドレスは下記のように表記されます。
http://www.asahi-net.or.jp/~gv8h-mtkr/index.htm先ほどのメールアドレスと違って今度はドメイン名が先に配置されていますね。
このようにドメイン名は、メールアドレスを示したりホームページのアドレス を示したりするために重要な役剖をもっています(う一ん、インターネット入 門講座みたいだ!!)。
これが企業名称になるとさらにやっかいです。日本で「matsuzakaya.co.jp」 なるドメイン名がデパートの松坂屋ではなく都内にあるまったく別の有限会社 に取得されているというニュースが流れました。また三越や味の素のネーミン グもすでに米国でドメイン名として別の会社が取得しているというニュースが 流れました。これらのドメイン名を取得した会社のいくつかはそのドメイン名 を有償譲渡することを目的としたピジネス(つまり「ドメイン屋」ですね)を行っ ているらしいとのことです。
このような商標・商号と絡んだ事件が増えてきた結果、NSI (Network Solution Inc. は、昨年の7月28日にドメイン名紛争処理方針宣言というものを発表しま した。
この中で、NSI は以下の点を改めて明確にしました。
ユーザー側がその証拠を提出できない場合には、商標権者とユーザーとの間で 名称変更などの話し合いによる解決がつくまで当該ドメイン名の使用が停止さ れます。
また、ユーザー側が証拠を提出した場合には、ユーザー側はそのドメイン名を 使用することができます。ただし、この場合にも他の商標権者によって NSI に訴えが提起されたときの対応費用をユーザー側で負担することに合意するこ とが条件となっています。
つまり、NSI としては、インターネット上での商標問題を意識しながらも解決 を当事者に委ねる方針を打ち出したわけです。このことは米国特許庁に対して インターネット関連の商標出願を急増させることになりました。つまり、「他 人にドメイン名をとられたくなかったら商標出願しておけ!!」ということに なったわけです。
何でもかんでも商標出願しておけばよいというものではありません。商標では 国際的に出願する分類が決まっており、だいたいどこの国でも42に分かれてい る分類のいずれかを指定して出願しなければなりません。
基本的にはインターネット上でどのようなビジネスを行うのか、そのコンテン ツによって出願しなければなりません。38類には「ネットワーク通信」という 言葉があることから米国ではインターネットビジネスについてこの38類に出願 が集中してしまい、混乱を生じてきました。そのため、今年の初めに米国特許 庁でばこの分類に対する指針が公表されました。
その分類内容はかなり事務的なのでここでは省略しますが、米国と日本では多 少違いはありますので、実際に出願する際には専門家に相談したほうかよいで しょう。でも、ドメイン名そのものを商標出願するのはあまり意味がありませ ん。ホームページに表示するマークを商標出願すべきです。その理由は後ほど 説明しましよう。
しかし、JPNIC にドメイン名として登録できるのは最初に申請した会社だけで す。必然的に先を越された会社は別のドメインを取得する以外にテはないわけ です。
ところが、日本では2番手で取得できなかったドメイン名も外国でなら簡単に 取得できる可能性かあります。たとえば、日本で東京にある ABC という会社が JPNIC でドメイン名「ABC.co.jp」を既に取得してしまっている場合、これとは 別の大阪にある ABC という会社は既に日本では自社の名称をドメイン名として 取得できません。しかし、ドメイン名の取得は何も日本だけじゃないというこ とで米国でならばそのドメイン名をまだ取得できるかも知れません。もし米国 で自社の社名をドメインとして取得できれば「ABC.com」となりますが、この ほうがイメージかよいという風潮もあります。
インターネットは国境のない世界ですから、ドメイン名をどの国で取得してホー ムページを開こうか、そのホームページを閲覧するユーザーはあまり意識しま せん。つまり、米国でドメインを取得して日本向けの日本語のホームページを 作ってもまったく問題ないわけです。現にインターネット版の朝日新聞のホー ムページは日本語で提供されていますが、そのドメインアドレスは http://www.asahi.com/ で実は米国から発信されているという事実はよく知ら れています。
ここに目をつけたのが先ほど登場した「ドメイン屋」さん達です。国内のほか にいくつかの著名企業の名称が米国でドメイン名として第三者に取得されてし まって、本家の日本企業は頭を悩ませているようです。
そもそもインターネットのドメイン名って住所なのでしょうか?それとも商標 のような機能を有している名称なのてしょうか?
将来インターネッ卜がもっと家庭内に入り込んで来たときには多分インターネッ ト端末にはキーボードはなくなっているでしょう。現に5万円パソコンと呼ば れるインターネット端末にはキーボードのないものも多いですよね。
家庭の居間で家族そろってインターネッ卜からの情報 (これはインフラが整備 されてマルチメディアオンデマンドが実用的になった時点での話かもしれない が) を大きなテレビで見るときに、わざわざ http://www.asahi-net.or.jp/~gv8h-mtkr/index.htm なんて呪文をキーボード から入力するでしょうか?
インターネットの WWW を見るときも、テレビ局を選択するリモコンと同様に 数字のボタンをピポパと押してやるのかあたりまえになるのではないでしょう か?
ラジオは最近ではシンセサイザーチューナーになって地城ごとに聞ける放送局 がプリセットできるようになっており、私たちはその放送局の周波数を意識し なくて聞けるようになっています。インターネットもホームページを閲覧する ときに最初の1回だけアドレスを登録してやれぱ、次からはボタン1つでそのホー ムページに飛べるようになるはずですよね。
現に今だって、本家「味の素」のホームページで料理のレシピを見るときには、 初めて http://www.ajinomoto.co.jp/ をアクセスしたときにこれをブックマー クに登録しておけば、次回からはブックマークのこの箇所をクリックするだけ でよいので、間違えて http://www.ajinomoto.com/ に行くことはないわけで す。
つまりドメイン名とはそのアドレスを示すまさに住所であって、「○△×通り ○丁目」と同じわけです。これに対して「商標」というのは商品やサービスを 識別するためのマークでして、単なる住所とば違うわけです。
そうすると、ドメイン名をあたかも商標のように知的財産の1つとしてその取 得競争を煽るのはなんか変ですよね。
ただ、そうはいっても自分の会社名が自分と関係のない第三者のドメイン名と して取得されてしまうのば愛社精神の強い (?) 日本の企業にとっては感情的 に許せない部分はあるとは思いますが…。
たとえぱ老舗デパートのドメイン名を取得した別の会社が、あたかもその老舗 デパートが通信販売を始めたと需用者に誤認させるようなホームページを開い たとしたら、それはドメイン名の問題以前に商標権侵害や不正競争行為となり、 ホームページが差し止められる可能性があるわけです。
ところで、商標は国ごとに権利を取得することが前提となっています。商品流 通やサービスの秩序が一国の産業発展に密接に関連しているため、表現文化を 保護する著作権ほど統一的な保護には至ってないのです。そのため、ある商標 が日本では商標権として認められたのに、米国ではすでに似たような登録商標 かあったため認められなかったという事例も数多くあります。
このような商標をホームページに表示した場合、日本では合法的でも米国では 他人の商標権侵客になるといった事態も予想されるわけです。インターネット は国境なく全世界からホームページを覗くことが可能なわけですから、商標問 題を完壁にクリアーしておくためにはインターネットか見れるすべての国であ らかじめ商標調査をしなければならないことになります。しかし、数千円で開 設できるホームページのために数百万円かけて全世界の商標調査をしておくこ とはナンセンス (死語か?) ですよね。
そこで、ビジネスとして外国向け (英語で記載された) ホームベージを開くと きには以下の点を明記するようにしたらどうでしょう?
私がアドバイスさせて頂いているいくつかのホームページではすでにこのよう な表記を始めています。見かけたら参考にしてくださいね。
インターネットのドメイン名にしてもホームページのマークにしても、消極的 な防衛策だけ講じていたのでは意味がありません。逆にインターネットは最低 限の予算で最大の広告効果が期待できるメディアです。
昔から日本国内でよく売れたプロダクツのコピー品が別の国で販売されるケー スが後を絶ちませんが、日本て販売を開始したらいち早くホームページ上でプ ロダクツを外観のパッケージ写真とともに表示し、このプロダクツの外観を世 界的に知らせることでコピー品の横行を予防すべくインターネットを利用して いくことも大切でしよう。