インターネットマガジン No.20 1996.09 pp.286-289 より、転載

ネットワーク時代の知的所有権入門
第19回
ホームページの上での人物写真の利用とリンクについて
−ホームページ作成で注意したいことあれこれ−

ネットワーク知的所有権研究会

弁護士 宮下佳之
Yoshiyuki Miyashita


さて、インターネット関連のビジネスは、ますます熱を帯びているようですが、 最近は一種のブームから当然のビジネス環境の1つとして定着しつつあるよう に思われます。しかし、定着しつつあるとはいえ従来の物差しでは測りきれな い新たな問題が山積みであるため、実際には手探り状態でインターネットを利 用している人がほとんどではないでしょうか。

今回は、読者の皆さんが特に悩んでいるのではないかと思われる、素材の利用 とリンクの問題について、考えてみたいと思います。


Q1

私は、将来ホームページを作ろうとしているものですが、そのホームページ制 作構想の1つに「私の今まで会った有名人(仮題)」として、ホームページ上 に今まで会った有名人と一緒に移った写真を載せようと思うのですが、ここで 1つ気になる点があります。それは、私が載ることは自己同意だからいいので すが、有名人の方を同意なしで載せることはやはり何かの法的傷害となるので しょうか?

私は、有名人の方に写真に写ってもらったこと自体が同意の一種になると思う のですが…。


A1

人格権としての肖像権の問題

肖像権関係の判例は、すでに数多くあるのですが、今回のご質問に関しては、 「マークレスター事件」が参考になりそうです。

この事件は、マークレスターというタレントが出演した映画の1シーンが、マー クレスターの許諾を得ずに、あるチョコレートメーカーのTVコマーシャルに利 用されたというものでした。当時、別のチョコレートメーカーのTVコマーシャ ルに出演することを予定していたマークレスターは、肖像権を侵害されたと言っ て、損害賠償を求めたんですね。

この事件で、裁判所は、「人がみだりにその氏名を第三者に使用されたり、又 はその肖像を他人の目にさらされることは、その人に嫌悪、羞恥、不快等の精 神的苦痛を与える」から、勝手に氏名や肖像を利用されたりすれば、法的な救 済−−差し止めとか、損害の賠償とか−−を求めることができるというような ことを言っています。

さらに、裁判所は、俳優などの場合の特殊性として、次のような判断も示して います。

俳優等は、「もともと自己の氏名や肖像が大衆の前に公開されることを包括的 に許諾したものであって、(…中略)それだけでなく、人気を重視するこれら の職業にあっては、自己の氏名や肖像が広く一般大衆に公開されることを希望 (…中略)しているのが通常」であるから、俳優等が自己の氏名や肖像の無制 限の使用を理由に精神上の損害賠償を求め得るのは、「その使用の方法、態様、 目的等から見て、彼の俳優等としての評価、名声、印象等を毀損若しくは低下 させるような場合、その他特段の事情が存する場合(…中略)に限定されるも のと言うべきである」

そして、裁判所は、許諾なくコマーシャルに利用されたりするのは「その使用 の方法、態様、目的等から見て、彼の俳優等としての評価、名声、印象等を毀 損若しくは低下させるような場合」に該当すると判断しています。

この裁判所の判断を前提とするかぎり、以下の条件をすべて満たす場合には、 人格権としての肖像権の問題は避けることができそうにも思われます。

  1. 有名人というのがいわゆるタレントであること。
  2. 商品やサービスの宣伝・広告に関係しない個人のホームページに掲載 する場合であること。
  3. タレントとしての「評価、名声、印象等」を害しないような形態での 利用であること。

パブリシティー権の問題

俳優などの場合には、上記のとおり人格権としての肖像権の侵害を主張する余 地は狭いとされているのですが、自分の肖像を経済的に利用する権利である “パブリシティー権”と呼ばれる権利が認められています。たとえば「マーク レスター事件」で、裁判所は「他方、俳優等は、自らかち得た名声の故に自己 の氏名や肖像を対価を得て第三者に専属的に利用させうる利益を有しており、 個々では氏名や肖像は独立した経済的利益を有しており、ここでは氏名や肖像 は独立した経済的利益を有することになり、精神的苦痛を被らない場合でも経 済的利益の侵害を理由として法的救済を受けられる場合が多い」と判示してい ます。そして、その後のいくつかの判例を通じて、“パブリシティー権”とい う権利が判例法上確立されてきています。

ご質問のケースの場合、特にこのパブリシティー権の侵害を構成するかどうか が問題となりそうです。例えば、ご質問のホームページが営利企業の開設する ものであった場合には、有名人の肖像は営利企業の宣伝・広告のために利用さ れたと考えられることになって、「自分の肖像を経済的に利用する権利」の侵 害が認められてしまいそうです。また、ホームページが純粋に個人が開設する ものであったとしても、不特定多数の人が自由に閲覧できる媒体であることが 「経済的に肖像を利用したものではない」と言い切れるかどうか、どうも疑問 があります。仮にタレントの人に「僕のホームページにあなたの肖像を利用さ せてください」と申し込んだら、報酬の支払いを求められるような気がしませ んか? だとしたら、お金を払わずに肖像を利用することは、やはり「有名人 の肖像に対する経済的な権利を侵害している」と判断される可能性が高いよう な気がしますね。

同意の範囲

次に、有名人が写真を撮ることを同意したことの意味について考えてみましょ う。写真を撮ることを同意した以上、その写真を家族や友達に見せたり、焼き 増しして送ったりすることなどは、当然予測できますから、そうした利用につ いても同意しているとは考えられます。しかし、写真を宣伝広告に利用したり、 不特定多数の人に配ったりすることまで予測していたとは考えがたいので、そ うした利用についてまで同意していたものとは言い難いように思います。

それでは、ホームページに載せることはどうでしょうか。個人が私的な目的の ために開設することからすれば、「写真を自分のアルバムに張り付けるような ものだ」というような意見もあるかも知れませんが、世界中の不特定多数の人 が閲覧できるように写真を公開し、しかもその画像データをダウンロードしう る状態に置くわけですから、写真を自分のアルバムに貼り付ける場合とは、大 きく性格が異なると言わざるを得ません。その点から考えれば、写真を撮るこ とを同意してくれたからと言って、直ちに、ホームページに載せることまで同 意したものとはいい難いのではないでしょうか。

営利活動のホームページの場合の結論

ご質問のケースで、写真を営利目的の企業のホームページに掲載する場合や何 らかの宣伝広告の一環として利用しようという場合には、パブリシティー権を 侵害するものと判断される可能性が高いものと考えられます。また、そうした 場合には、有名人が差し止めや損害賠償を求めてくることも十分考えられます。 従って、そのような利用の仕方は避けるべきです。また、有名人の「評価、名 声、印象等を毀損若しくは低下させるような」利用の仕方をすれば、人格権と しての肖像権の侵害も認められることになるでしょう。当然その場合も、差し 止めや損害賠償が問題とされる可能性は十分あります。

個人のホームページの場合の結論

問題は、純粋に個人的なホームページに、自己紹介の一環として、有名人と一 緒に撮った写真を掲載するような場合です。インターネット上で公開すること のインパクトから考えると、そのような場合であっても、やはり個別に許諾を 得ないと肖像権やパブリシティー権の侵害であるなどと言われる恐れは否定し がたいように思われます。しかし、(1)個人の趣味的なホームページ上での利 用であって、営利活動のために利用しているものではないこと、(2)あくまで も自己紹介の一環として利用しているものであって、有名人の「評価、名声、 印象等を毀損若しくは低下させるような」恐れがあるとは言い難いこと、(3) 同意を得て撮影した写真の個人的な利用の一環とも考えられないではないこと などから考えると、肖像権やパブリシティー権を侵害している、と断定するこ とにも躊躇を感じます。

ただし、有名人と言っても、小説家や画家のように、必ずしもテレビや雑誌な どに出演することを業としていない人たちもいるわけで、こういった人たちは 「自己の氏名や肖像が大衆の前に公開されることを包括的に許諾した」とは言 い難いようにも思われますので、原則通り、個別に許諾を得なければ、人格権 としての肖像権の侵害の問題が生じうるものと考えられます。

また、撮影の経緯や状況を明確にせずに利用した場合には、その有名人とホー ムページ開設者のとの関係が誤解される恐れが生じてしまいますので、権利侵 害が認められる可能性が高くなるように思われます。

以上のように法律的には、相当微妙な問題であると考えられますが、不特定多 数に公表する結果になることやインターネット上で勝手に肖像を利用されるこ とを不快に感じる人もいるだろうと思われることを考慮すると、やはり、本人 に了解をとるのが賢明のように思われますね。


Q2

インターネット上の画像をダウンロードし、それをそのまま自分のホームペー ジに載せることは、明らかに著作権を侵害していると思います。
しかしながら、最近ではフレーム機能などを使えば画像を直接URL指定して見 せることができます。
また、参考文献などを別フレームに表示させれば事実上全文引用も可能なわけ です。しかしこの場合は指定された画像や文献は単に相手のブラウザー上で組 み合わさっているだけで、自分が個人利用のためにダウンロードしてきた画像 や文書データを他人に再配布しているわけではありません。ホームページを作っ た人が行なったのは、単に「URLという文字を書いた」ということにほかなり ません。

でも、結果としては画像などをダウンロードして再配布したのと同様の効果が 得られるのです。この場合、ホームページを作った人は著作権を侵害している ことになるのでしょうか?


A2

リンクを張ることの著作権法上の意義

この問題の前提として、まず、リンクを張ることの著作権法上の意義について 考えてみなければなりません。

リンクを張ることは、簡単に言えば、リンク先のURLをページ上に記述するこ とであって、リンク先のデータ自体をページ上に記述しているわけではありま せん。いわば、住所だけ紹介して(リンク先にジャンプできることから考えれ ば)、いわば道案内もして)、データ自体は、利用者が直接その住所のところ に行ってにゅうしゅするというようなことをしているわけです。リンク先のデー タが著作権法で保護される著作物であるとするとリンク先のデータをコピーす れば、著作権侵害が問題になりうるわけですが、リンクを張ったからと言って、 リンク先のデータ自体をコピーするわけではないし、リンク先にジャンプした 利用者は、リンク先のホームページを見ているだけなのですから、リンクを張 ること自体が著作権侵害になるとは考えがたいと言わざるを得ません。もっと も人によっては、「コピーして利用するのと同様の効果が生じるのだから、著 作権侵害が問題になる」ということを主張されているようですが、理屈として はかなり苦しいのではないかと考えています。

もちろん、コピーをしなければ全く法的に問題にならないというものではあり ません。たとえば、下品なポルノのページだと紹介して芸術作品を掲載した写 真家のホームページにリンクを張ったり、うそつきのホームページとして政治 家のホームページにリンクを張ったりすれば、場合によっては、名誉毀損なり 人格権の侵害などの責任を追及されたりすることも考えられます。

ホームページの一部にリンクを張った場合の問題点

さて、ご質問のケースのようにリンク先のホームページ中の一部のGIF画像な どに対してのみリンクを張り、自分のページにそのGIF画像などを組み込む場 合には、ちょっと話が変わってきます。確かに、リンクを張ること自体は、コ ピーをすることを意味するわけではないのですが、利用者がアクセスして閲覧 したり、ダウンロードしたりする際の状況を考えると、「リンク先のホームペー ジの権利者が想定していない形態で利用者の端末上でコピーが為されている」 と考えることも可能だからです。また、著作物の一部を切り取って利用してい るという意味で、「同一性保持権」と呼ばれている権利の侵害も問題となり得 ます。この同一性保持権とは、著作者の人格的権利の一つであり、著作物を意 に反して改変されない権利を意味します。

リンクを張られることによる不利益

では次に、リンクを張ることがなぜ問題とされるかを考えてみたいと思います。

まず、「自分のホームページは、知らない人には見せたくないのに、リンクを 張られてしまえば、リンクを通じて、知らない人も見に来ちゃうから困る」と いうような意見が考えられます。これは、「リンクを張るのは、自分の住所や 電話番号を、勝手に見ず知らずの人に教えるのと一緒じゃないか」というよう な考え方に基づくものです。しかし、実生活上の住所や電話番号と違って、イ ンターネット上のWWWは、リンクを張り巡らすことによって、世界中の情報を 有機的に関連づけようという思想に根ざすものであって、リンクを張ること、 張られることは、もともとインターネットの特性として折り込み済みであるよ うに思われます。したがって、上記のような意見はなかなか受け入れてもらえ ないのではないかと考えています。

2番目の意見として、「自分としては、トップページからアクセスしてもらっ て、次第にしたの階層のページを見てもらいたいのに、下の階層のページにリ ンクを張られてしまうと、トップページを飛ばして、いきなり下の階層のペー ジにアクセスされるようになって困る」というようなものが考えられます。確 かに、トップページに宣伝広告があり、トップページの宣伝広告が見てほしい からこそ、下の階層のページに魅力的なデータを置いてあるような場合には、 そうした意見が出てくるのは理解できないではありません。しかし、そのよう な主観的な期待を、法的に保護すべき程度のものと言うべきかどうかは、かな り疑問があります。リンクを張るほうからするとリンク先のホームページ開設 者がそのような期待を持っているのかどうか判別が困難であるし、リンクが張 られていなければ利用者が実際にトップページからアクセスすることが保証さ れているわけでもないからです。

単純にリンクを張る場合と違って、リンク先のホームページの一部を自分のホー ムページに組み込むような場合には、「自分の意図しない素材と結合して利用 するようなことは、自分が許諾した利用の範囲を逸脱している」とか、「自分 のホームページないしは自分自身と、リンクを張った人との関係などが誤解さ れかねない」などの意見が出てくることが予想されます。いろいろと異論はあ り得るものの、そのような意見については、賛同を得られる可能性は相当ある のではないかと思われます。

どうもいろいろ考えていくと、リンク先のホームページの中のGIF画像などの みを参照して、自分のホームページに組み込むような場合には、法的に問題と される可能性が結構有るような気がしますね。


ネットワーク時代の知的所有権入門