INTERNET MAGAZINE 1996.3 より、転載

ネットワーク時代の知的所有権入門
第13回
ホームページを作ろうというあなたに…(その2)
−使っていい素材と悪い素材−

ネットワーク知的所有権研究会

弁護士 宮下 佳之
Yoshiyuki Miyashita


はじめに

今回も前回に引き続いて、 ホームページを作ることと著作権などの権利との関係について考えてみましょう。 まずは、キャラクターの利用についての次の質問から…。

Q.

(某インターネット関連の雑誌の)記事中に、 海外のトイ(玩具)コレクターなどのホームページを紹介しているところがあり、 そこに、スターウォーズのキャラクターがしっかり写っているのです。 「(C)」の表示は見当たりません。 出版社というところは、商売で雑誌を出しているのでしょうし、 それを勝手にコピーされたり、スキャナー取り込みして WWW に張り付けられたら、 きっと「著作権を侵害された!」といって怒ると思うのです。 著作権については、どこよりも神経を使っていると思うのです。

この場合に、紹介されている WWW サイトが、 そのキャラクターの版元の了解を取っているとは到底思えないのです。 そして、そのようなホームページを紹介する出版物は、 キャラクターを作っている版元とは何の関係もないのでしょうか。 あるいは、「正当な引用の範囲」という言い訳が通ってしまうのでしょうか。 また、出版社が商売で売っている雑誌にキャラクターの写真を載せている一方で、 趣味でほそぼそと無償の WWW している私は、 商品化権の伴うようなキャラクターものについては 掲載の許可を取っておくべき」なのでしょうか。 そして、権利を持っている人は、どこにいて、どんな方法で連絡をとれば、 OK なり不可なりの返事をいただけるのでしょうか。


A

フィクショナルキャラクターの名称や姿態は、実在のアーティストの場合と違って、 著作権による保護の対象となるものと考えられています。 ご質問の「スターウォーズ」のキャラクターは、明らかに著作物に該当しますから、 著作権者は、「勝手にコピーするな」とか、 「勝手に不特定又は多数の人が見たり聞いたりできるようにするな」 などと言えるのです。 仮に、海外のトイ(玩具)コレクターなどのホームページに、 無許諾で「スターウォーズ」のキャラクターが載せられていたとすると、 著作権者は、権利制限規定の対象とならない限り、「勝手にホームページに載せるな」 と言えることになります。 そして、それをさらにコピーする出版社は、 たとえホームページの開設者の了解を得たとしても、 キャラクターの著作権者の許諾を取ったわけではないので、 キャラクターの著作権者から、 「勝手に雑誌の記事にキャラクターや名称や姿態を載せるな!」 と文句を言われることになるのです。

出版社側が反論するとすると、ご質問で指摘されていたように、 「著作権法第32条で規定されている、正当な引用だ!」 ということでしょう。 しかし、海外のトイ(玩具)コレクターが無許諾で正当な権限なく キャラクターを利用していたとすると、キャラクターの権利者に対する関係では、 有効な反論になるとは考えられません (もっとも、損害賠償責任を問題とする際には、 権利侵害となることを知っていたか、または、 知らなかったことについて「過失」があったことが必要とされているので、 海外のトイ(玩具)コレクターが キャラクターを利用する権限を持っていないことを知らず、 かつ、知らなかったのもやむを得ない事情があったことを証明できれば 損害賠償の責任を逃れる余地はありますが…)。 たしかに、キャラクターについて著作権法上の保護が及ぶ、といっても、 これをあまり厳格に考えるのも問題があるように思われます。

たとえば、子供が大好きなキャラクターの絵を描いて、 これを作品発表会で多くの人に見せてはいけないのでしょうか。

著作権法第30条には、「著作権の目的となっている著作物(…)は、 個人的に又は家庭内そのほかこれに準ずる限られた範囲ないにおいて 使用すること(…) を目的とする場合には、(…) その使用する者が複製することができる」 と規定されています。 したがって、子供が自宅で大好きなキャラクターの絵を描いても、 著作権法でいう「複製」ではあっても、 上記の著作権法第30条の適用によって権利侵害の責任は負わないことになります。 しかし、作品発表会で多くの人に見せることを「目的」とするような場合には、 「個人的に又は家庭内そのほかこれに準ずる限られた範囲内において使用すること (…)を目的とする」とは言い難いので、 著作権侵害が問題となることになってしまいます。

しかし、それでいいんでしょうか。 たしかに、公衆が見れる場所にキャラクターの絵が描かれて、 それが半永続的に存続するとすると権利者のほうも何とかしてほしい、 と思うでしょう。 しかし、作品発表会でごく限られた期間展示するにすぎないような場合にまで、 著作権侵害だと考えるのは適当と言えるでしょうか。 著作権法第38条によると、「公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、 聴衆又は観衆から料金(…)を受けない場合には、 公に上演し、演奏し、口述し、又は上映することができる」と規定されています。 これは、非営利で、かつ一時的な利用を認めるにすぎないような場合には、 著作権侵害を問題としなくてもいいんじゃないかという思想が 表われているものと思われます。 子供が描いたキャラクターの絵を一時的に作品展に来た人に見せるのは、 上記の趣旨から考えて、認められてもよいような気がしています。

それでは、ホームページに非営利でデータを載せる場合はどうでしょうか。 ホームページにアクセスした人に 一時的にデータを利用させるにすぎないんだと考えれば、 まさに著作権法第38条の思想があてはまるように考えられないでもありません。 しかし、人を一定の場所に集めて演奏するような場合と違って、 インターネット上で提供すれば、世界中の人が利用可能になるわけですから、 地域的にも、またその数からしても、権利者に対する影響は、 より大きいものと考えられます。 また、アクセスした人がデータをダウンロードすれば、ダウンロードした人は、 データを反復継続的に利用できるようになるわけですから、 「その場で演奏しておしまい」というような場合を前提とした 著作権第38条の場合とは、意味合いが相当に違うのではないかと思われるのです。

「趣味で無償でほそぼそと WWW している」といっても、権利者の方とすれば、 「無償」であるがゆえに、 お金を取って著作物を利用することが阻害されることになるわけですし、 インターネットによるデータ提供の影響の大きさを考えれば、 やはり慎重に対応するのが望ましいと考えられるのです。

現在、権利者の所在を確認する手段は相当に限定されていて、 権利処理を円滑に進める上での支障になっているとの指摘がされています。 そこで、権利の集中処理の方法とその問題などに関して、 各方面で盛んに議論が進められているところです。 現状では、「あそこに行けば確実に権利者が誰かわかる」 とういような場所はないので、 権利者を確認すること自体が相当に困難なケースも多々あります。 しかし、著作物のタイプごとにいろいろな団体(商品化権の関係であれば、 日本商品化権協会という団体があります)があるので、 そうした団体などを通じて権利者を確認することも考えられます。

ところで、ホームページを作ってインターネット上で公開するということは、 通常は、「WWW で、僕のホームページを見ていいよ!」 と宣言してるみたいなもんですから、 利用者の立場からするといちいちホームページを作った人の所に行って、 「あのー、あなたのホームページ、僕のマシンで見ていいですか?」 とうかがいをたてる必要はないわけです。 でも、ホームページをハードコピーにとって、フロッピーディスクかなんかに入れて、 有料で販売しちゃってもいいんでしょうか。 テレビで放送しちゃったらどうでしょうか? こうした問題に答えるためには、 「ホームページを作ってインターネット上で公開する」 ということの法的な意味について検討してみる必要がありそうです。 そこで、次の質問について考えてみたいと思います。


Q

最近、インターネットカフェがブームになっていますね。 無料だったり、利用料を時間あたり何百円か取ったりしているようです。 また、 お客さんへのサービスとして人気のサイトに簡単にアクセスできるようにしたり、 かわりにつなげてくれたりします。 ここで、テレビ放送や映画上映などの際についてまわる 「上映権(放映権)」という権利が問題になってくると思うのですが… いかがでしょうか?

そもそも、 無料で公開して情報発信をしているのだからという意見もあろうかと思います。 しかし、これはあくまでも、 自分のパソコンなどを使って個人的に楽しんでもらおうということを前提にして 行っているというのが大半だと思います。 ですので、 営業上の販促の手段や上映そのものを営業としたりするなどの 営利目的のために特定の WWW サイトのコンテンツを見せているのであれば、 そこの売り上げの何%かを著作上映料として著作権者に支払う義務が 発生してくるとも考えられるのではないでしょうか?

これというのも、 私などが中心となって地元 J リーグチームの鹿島アントラーズの公認ホームページを 立ち上げているところなのです (URL http://www.hmw.or.jp/~nasubi/Antlers/ )。

アントラーズの広報担当の責任者からホームページで 各選手の近影の画像や映像を公開したとき、 それらのコンテンツを端末で上映してお金を取って営業する業者が出てきたとしたら、 これはかなり問題になるとの指摘を受けました。 インターネットカフェといわれるところすべてのお店から、 NHK のように受信料などというかたちで集金なんて不可能ですので、 とりあえずの策として、 各選手の近影の画像などは掲載しないということになりました。 試合の様子を遠目に引いて撮った画像のみを載せるといったところです。 自分たちで写真を撮るといっても、 今度は肖像権の侵害という問題も出てきますので、 ローカルなチーム情報を中心に文字情報を充実させていくことで テレビなどのマスメディアとの差別化を図っていく予定です。 みなさん応援よろしくお願いします。


A

はい。ぜひ、がんばって下さいね。 じゃあ、まず、WWW サイトに利用者がアクセスして、 端末のディスプレイ上にコンテンツを表示することは、 著作権法上どのような意味を持つものであるかについて考えてみましょう。

ディスプレイ上の表示と上映権

ご質問の「上映権」という権利は、すくなくとも現行法上は、 「映像の著作物」についてしか認められていません。 じゃあ、「映画とはなにか」なんですが、実は、 明確な定義はなくて、 「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、 かつ、物に固定されている著作物を含む」 というような規定があるだけなんですね。 そこで、ホームページは、「上映権」が認められている 「映画の著作物」に該当するのかがまず問題になります。 実は、もともと映画についてだけこのような「上映権」が認められたのは、 劇場用映画が、 通常は劇場での上映という形で利用されていることに基づくものだったんです。 でも、判例上では、 映画の市販用ビデオや「パックマン」のようなテレビゲームのディスプレイの映像も 「映画の著作物」になると考えられています。

これは、動画がディスプレイ上で表示されるのは、 「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果」を生じさせるという点を 根拠としているようです。 そこで、仮にホームページ上で動画データも提供されていたとしたら、 ホームページも「映画の著作物」だと考える余地があります。 そうすると、そのようなホームページを、 不特定または多数の人に見せたとしたら、理論的には、 上映権侵害の問題が起きることになります。 ところが、 現状ではホームページ上で動画も提供されている例は多くはありませんし、 静止画像が提供されているだけでは、 「映画の著作物」とはちょっと考えにくいので、 少なくとも現状では、「上映権」が問題となることは 考えにくいのではないかと思っています。 それから、ご質問のなかで、「放映権」に関しても指摘されておりますが、 これは法律的には、「放送権」もしくは「有線送信権」 という権利の問題となります。 ここでは、あまり詳しく説明はしませんが、いずれの権利も、簡単にいうと、 「勝手に俺の著作物を公衆に送信するな!」と言える権利と言うことです。 ホームページが表示されたディスプレイを不特定または多数の人に見せる行為自体は 「送信」とは考えにくいので、 ご質問のケースで、 「放送権」や「有線送信権」を侵害するものとも考えにくいことになります。

WWW サイトへのアクセスと複製権

じゃあ、WWW サイトにアクセスして、そのコンテンツを端末上に表示することは、 著作権法上まったく何の問題にもならないんでしょうか。 いいえ。実は、上映権などよりもっと重要な権利が問題となりうるのです。 それは、「複製権」という著作権法上において中核的な権利です。 複製権というのは、簡単に言うと 「俺の著作物を勝手に複製するな!」と言える権利です。 この「複製」という言葉は、著作権法上は、 「有形物に再製すること」と定義されています。 べつに、コンテンツをプリントアウトしなくとも、 コンテンツを「有形的に再製」していれば、「複製権」が問題となるのです。 WWW サイトにアクセスして、 端末のディスプレイ上にそのコンテンツを表示する場合には、 端末の RAM 上にデータが蓄積されることになるわけですから、 まさに、コンテンツが「有形的に再製」されることになると考えられます。 そうすると、 WWW サイトにアクセスしてそのコンテンツを端末のディスプレイに表示する行為は、 法律的には、以下のような意味を持つことになります。

すなわち、ユーザーが WWW サイトにアクセスしてそのコンテンツを見ようとすると 「複製」が行われることになって、 本当はいちいち「コンテンツを見てもいいですか?」 とおうかがいを立てなきゃいけないところだけど、 少なくとも WWW サイトを立ち上げた人は、利用者が WWW サイトにアクセスして、 そのコンテンツを利用者の端末のディスプレイ上に表示することを「許諾」 していると考えられるから、通常は複製権の侵害は問題とならないということです。 そうすると、コンテンツの提供者が予定していないような形態で ホームページに誰かがアクセスした場合には、「許諾の範囲を超えている」 ことを根拠として、「複製権」侵害を主張する余地がでてきます。 しかし、この点についてはまだ定説がなく、RAM 上にデータが蓄積されるような 「瞬間的、過度的な蓄積は、著作権法上の複製ではない」 という考え方も強く主張されているようです。

ym としては、いずれの考え方も理論的には不可能ではなく、 どちらの考え方が現状の権利関係をうまく調整できるのかを見極めることが 重要だと考えています。

ちなみに、「複製権」が問題になるという立場に立ったとしても、

  1. 端末を第三者から借り受けて WWW サイトにアクセスすることを、 WWW サイトの開設者が禁止しているとは考えにくいこと。

  2. インターネットカフェにおいては、 お客が端末やそのほかの施設を一時的に借り受け、 一定のサービスの提供を受けているものであっても、 お客が支払う料金は、 端末やそのほかの施設の利用およびサービスの提供に対する対価と考えられ、 特定のコンテンツの提供に対する対価とは考えにくいこと。

などの点を考慮すれば、 特別の事情がない限り許諾の範囲内であると考えられるのではないでしょうか。


ネットワーク時代の知的所有権入門