いやーちょっと油断している間に、 読者の皆さんからの質問がやたらたまってしまいました。 今回は、ym が、WWW serverの管理者は、どのような責任を負うのか、 という問題と、ホームページを作る際に、どんな権利が問題になるのか、 という問題等について、私なりの考え方をお話しましょう。
Linc というグループで WWW server を立ち上げており、 私個人のホームページには、ゲームが出来るページをいくつか持っています。 相談というのはつい最近作ったページに関してです。 どのようなページかというと、
- Web ブラウザでアクセスして来た人が(当然、世界中からです)
- その人のオリジナルのクロスワードパズルを
- 私が作ったクロスワードパズルのページと同じような形で
- Linc のサーバに登録でき、
- 他の人がそれを楽しめる。
というものです。
本来、ホームページを持っていないクロスワードパズルファン (特に米国の人は凄く熱心です)にも、 オリジナルのパズルを発表してみんなで楽しめるようにと作って見たのですが、 完成直前に大事な事に気が付きました。
上記 (2) で、登録しようとしている人がその人オリジナルなパズルではなく、 他に著作権を持つ持つ人がいるパズルを登録した場合の、 そのパズルが電子的な形で登録されている WWW server の管理者 (つまり私ですが)の責任はどうなるのかです。
(4) の時点では私はそれが登録した人のオリジナルのものかは判断が出来ず、 もし (5) で本当の著作権者がそれを見て私に損害賠償請求などされた場合には 目も当てられません。 (もちろん、それを証拠づけるものがあれば、 そのパズルの登録を抹消する事はやぶさかではありませんが) このような時に、私に損害賠償をしなければいけない義務は出て来るのでしょうか? どのような手順を踏めば、そのような問題にはならないように出来るのでしょうか?
また、インターネット上の WWW server という性格上、
- a. 登録された WWW server は日本にある
- b. 登録した「偽作者」は A 国人
- c. 本来の著作権者は B 国人
という状況も考えられ、 このような時はどこの国の著作権法が適用されるのでしょうか?
- 損害賠償責任を負うのは、どのような場合か。 結論から言いましょう。 濱野さんがオリジナルのパズルでないことを知っていたり (これを、法律では「故意」と言います)、 ちゃんと注意を払っていれば、 オリジナルでないことがわかったはずだったのに、 注意を払うのを怠っていた(これを、法律では「過失」と言います)、 というような場合には、濱野さんも損害賠償の責任を負う可能性があります。 それから、濱野さんに「故意」とか「過失」がなくとも、 パズルの本当の著作者は、少なくとも、「差し止め」、すなわち、 「WWW serverからの削除」、を濱野さんに要求することができます。 従って、濱野さんとしては、そのような問題になった場合には、 そのパズルをWWW server から削除しなくてはならなくなることを覚悟しておかなければなりませんし、 損害賠償義務を負わないように、 「適切な注意」を払う必要があることになるのです。 それでは、どうすれば、 「適切な注意」を払った、と言えるようになるのでしょうか。 そこが次の問題です。
- ネットワークの管理者等の責任問題の現状現在、 ネットワーク環境が進んだこともあって、ご質問のような事例は、 色々なところで問題になってきています。 米国の判例では、Playboyに掲載されていた写真が、 勝手にある BBS にアップロードされた事案で、 BBSのオペレーターに、 著作権侵害の責任を負わせたケースもあります (どんな写真かは、わかりますよね。 日本ではみんなに見せちゃいけないことになっている写真を、 海外のWWW server にアクセスして、 ダウンロードすることに伴う問題については、 次々回(?)に、terraにお話ししてもらいます。)し、 例の CompuServe も、 MIDIデータが許諾なくCompuServe上にアップロードされたのは、 管理が甘いからだ!等と言われて、現在、権利者から訴えられています。 日本でも、BBS上でメンバーからずいぶんとひどいことを言われた人が、 Nifty-serveの管理が甘いからだ、と主張して、 Nifty-serveを相手に訴訟を起こしています。
確かに、 一旦ネットワーク上で他人の著作物が無許諾でアップロードされてしまえば、 瞬く間に、ものすごい数のコピーが出回ってしまう可能性があるので、 管理者の責任は、それだけ重大だ、と考えられないではありません。 インターネット上で提供される場合には、それこそあっと言う間に、 世界中に違法コピーが広まってしまう可能性だってあるわけですから、 大変な問題になりうるわけです。 しかし、一方で、現実に著作物をアップロードしようとする人が、 本当の著作者かどうかは、 通常は、調べようもないのであって、違法コピー問題とかが起きれば、 いつでも運営者に責任を負わせようというのでは、 だれもネットワークの運営をしようなんて思わなくなってしまいますよね。 それじゃあ、ネットワークのための折角のインフラは、 ただのガラクタ、になってしまうわけです。
- 具体的対応
ymは、権利関係を正確に把握できない現状においては、 ネットワーク社会は、最終的には、参加者の良識に期待しない限り、 成り立たないのではないか、と言う気がしています。 そして、その良識、すなわち、あるべきルールづくりをするのは、 ネットワーク社会を利用しようとしている我々なのです。 ネットワークの運営者は、 ネットワーク社会に参加しようとしている人たちの コミュニケーションの窓口なのですから、 そのルールの伝道者でもあるべきです。 従って、ネットワークの運営者は、少なくとも、
- 権利に対する無知によって、 意図しない侵害行為が行われないよう、 無断複製などに伴う法的問題について、 参加者に告知すること、
- 侵害の疑いが生じたときには、その疑いが晴れるまでは、 ネットワーク上での提供を見合わせること、 等の対応を取るべき義務を負うものと考えられます。 逆に、そうした義務を果たしている限り、 後は参加者の良識を信頼するしかないのではないでしょうか。
そこで、ご質問のケースでは、 以下のような措置を執られたらいかがでしょうか。
- a:
- 無断で他人の作品を登録すれば、著作権侵害等の問題が生じ、民事上、 刑事上の責任を負うべきことになることを説明し、 登録しようとするパズルが、 オリジナルのものであり、 他人の作品についての権利侵害などは問題とならないものであることを 確約してもらう。
- b:
- 万一、権利侵害が問題となり、濱野さんが紛争に巻き込まれた場合に、 濱野さんが損害を被らないように、濱野さんに対して、 補償をする義務を負うことを、 約束してもらう。
そのために、登録しようとする人には、 実名、住所などを連絡してもらう。- c:
- 権利侵害などの疑いが生じた場合には、濱野さんは、 登録者の承諾を得ることなく、 直ちに問題のパズルの登録を抹消することができるものであることを 了解してもらう。
- d:
- 以前に他人のパズルを無許諾で登録した人からの登録は、 一切認めない。 また、以前に、 無許諾で他人のパズルを登録した合理的な疑いのある人からの 登録の請求は、 その疑いが解消されない限り、認めない。
- どこの国の著作権法が適用されるのか。
著作権法は、国ごとに別の権利と考えられ、 これを「属地主義」等と言っております。 仮にWWW server が日本にあったとすれば、 著作権者の権利である「複製」とか「有線送信」の行為は、 日本で行われているものと考えられ、 日本の著作権法が適用されることになります。 ところで、日本の著作権法によれば、本来の著作権者が、 ベルヌ条約等の加盟国の国民であって、 日本が条約上日本の著作権上の保護を与えるべき場合には、 B国人である本来の著作権者は、 日本の著作権法上の保護を主張しうることになります。 どこの国の著作権が適用されるかは、 どこの国で、 著作権者の権利に抵触する「複製」とか「有線送信」とかの行為が 行われるかによって、 決まることになるのです。 しかし、たとえば、WWW server は日本にあっても、 実際にそのWWW server にアクセスするのは、 もっぱら海外の人であっと場合には、 どこで、 「複製」とか「有線送信」などの行為が行われたものと 考えるべきなのでしょうか。 そうした準拠法の問題をどのように考えるかについて、 現在色々と議論されているところです。 いずれ、この問題についても詳しくご説明しましょう。
さて、先日知り合いの人から、 「インターネット上で賭博場を開きたいのだがどうしたらよいのでしょうか?」 という質問を受けました。 私も気になったので、調べたのですが、あるわあるわ、 米国には賭博専用サイトが少なく見積もっても10はあります。 知的財産権の問題からは離れるかもしれませんが、 いったいインターネット上の賭博はどう法的に解釈できるのでしょうか?
- 賭博が非合法の国の人がインターネット上で賭博をすれば犯罪になるのか?
- 賭博場のサイトが、賭博公認の州または国にあれば、 だれがアクセスしてきてもかまわないのか?
- 賭博で儲けた金の課税権はどの国が持つのか?
- 不正行為が起こった場合にはだれが取り締まるのか?
考えれば考えるほど、不思議です。なにか示唆がありましたら、ご返答下さい。
そうなんですね。インターネットは、 世界中の人とシームレスで繋がっていることから、 色々とわからない問題があるんですよね。 順番に分析していってみましょう。 ご質問のケースで、仮に日本で賭博のサイトがあって、 日本にいる人が、賭博場を開いたとします。 日本の刑法では、賭博場を開いた人は、賭博場開帳罪という犯罪を犯したものとされ、 3月以上5年以下の懲役に処せられるものとされていますので、 賭博場を開いた人は、「賭博場開帳罪」を犯したことになります。それでは、賭博場のサイトが日本にない場合はどうでしょうか。
日本の刑法に規定てばれるものがあって、 日本人が日本国外で行った場合であっても犯罪として処罰する、 とされる犯罪があります。 仮に、賭博場のサイトが、国外にあって、 犯罪行為が日本で行われていない場合であっても、 仮に賭博場開帳罪が、国外犯である場合には、その人は、 日本の刑法上の刑事責任を負うことになるわけです。
しかし、賭博場開帳罪は、国外犯の中には含まれていませんので、たとえ日本人が、 国外のサイトで賭博場を開いたとしても、 賭博場開帳罪の責任を負わないことと考えられるのです。
以上が日本の刑法上の考え方の基本ですが、インターネットの世界では、 そもそも一体どこで賭博場を開いたと見るのが適当かどうかは、 かなり難しいですよね。 例えば、賭博場を開くための行為のほとんどが日本で行われているような場合には、 たとえ、サーバーが海外にあると言っても、 日本で犯罪行為が行われていないと考えていいのかどうか、疑問があります。
次に、日本人が実際に賭博が認められている国や州に行って賭博行為をしても、 犯罪とはなりませんが、日本にいながら、 インターネットを通じて、 賭博が認められている国や州のサイトで開かれている賭博に参加する場合には、 賭博という犯罪行為は、日本で行われている、 と考えられる余地があるのではないかと思います。 ただ、実際に賭博が認められている国や州に旅行に行って賭博をした人と、 インターネットを通じて参加した人とをそんなに別に考えていいのかどうか、 さらによく検討してみる必要がありそうですね。
ところで、課税権は、利得を得た人の住所地の国が持つのが原則ですが、 利得の源泉地が住所地以外の国である場合などには、 各国間で合意されている租税条約等の取り決めに従って、課税権の如何が決まります。
この場合も、一体賭博行為がどこで行われているものと見るべきか、 という点が問題となるわけです。 紙面の都合から、あまり詳しくご説明できないのは残念ですが、 インターネットを通じた取引に関しては、各国の課税権や外為法上の規制の適用など、 様々な問題が生じつつあり、その解決が迫られてきているのです。
今回のテーマは、「みんなでホームページを作ろう!」ですが、 ホームページを作る際に、どんな素材は黙って使ってよくて、 どんな素材を黙って使うと問題になるのかをよく考える必要があります。この点に関して、まず、三谷さんからの質問です。
私は、現在は、会社の acoount にて、 e-mail/net-news/WWW を利用していますが、 近々、personal な account ?? を取得し、仲間を募って、 やってみたいと考えていることがあります。 (私(と、仲間)は、模型作りが趣味です。)「On line 模型作品展示会」
模型にはいろいろなジャンルがありますが、たとえば、プラモデルの箱に、 版権使用許諾?のシールが貼ってあることがあります。
テレビ番組のキャラクターなどです。また、F1のレーシングカーや、 私鉄の電車にも、版権に相当するものが存在すると聞いています。
これらを買った人が組み立てた作品にも、版権はついて回るのでしょうか。 特に、不特定多数の方に向けて WWW で公開するという条件がついた場合に、 許可を得たりする必要があるでしょうか。
「知らなかったふりをしてやってしまう!」という手もあったかもしれないのですが、 やはり大人として恥ずかしいと思い、 場合によっては薮蛇をつつきかねないとは思いつつ、模型メーカ各社に、 切手を貼った返信用の封筒を同封した「お願い」の書簡を送りました。 返事を待っているところです。
模型クラブが、作品展示会を開いていることは、 それほど珍しいことではありませんが、作品展示にあたって、 特にどこそこに許可を求めたという話は聞いたことがありません。
唐突な質問で申し訳ありません。よろしくお願いいたします。
- (1) 商品化権と証紙について
- さて、ドラエモンやミッキーマウスなどの いわゆるフィクショナル・キャラクターは、 著作権法によって保護されており、著作権者の許諾なく、 勝手にプラモデルなどの商品に、キャラクターの名称や形態などを使用すれば、 著作権侵害の責任を負うことになります。
そこで、商品にキャラクターの名称や形態などを使用したい人は、 商品化権と呼ばれる権利の許諾を受けなければならないことになるのです。 また、商品化権の許諾を受けた人は、一般に、権利者から、 使用料を支払った商品であることを明らかにするために、 証紙を貼付するよう要求されるのです。
これは、 許諾に基づいて製造された商品を 証紙によって識別できるようにすることを通じて、 無許諾で製造された商品が、 市場に出回らないように監視できるようにするためです。
ご質問の「シール」は、この証紙のことだろうと思われます。
- (2) 物の展示と著作物の複製、有線放送
- ところで、商品化権は、基本的には、著作権法上の問題ですから、 プラモデルを買ってきて、これを組み立てた人が、これを、物として、 著作権法上制限されていない形で利用してもよいことになります。
著作権法上は、著作物の複製物の所有者は、 それを人にそのまま見せてもいいことになっているので、 模型クラブが、作品展示会を開くために、 著作権者の許諾は特に必要がない、と考えられるのです。
しかし、できあがった模型を、WWW server を通じて公開するためには、 模型の写真を撮って、 WWW server に蓄積するなどの「複製」行為をしなければならなくなります。 前にもお話ししたように、「複製」をコントロールする権利は、 著作権の最も重要な権利とされていますから、 できあがった模型を、WWW server を通じて公開するためには、 やはり、著作権の問題が生じてきてしまうのです。
従って、少なくとも、 商品化権の対象となるようなキャラクター商品を公開されようとする場合には、 事前に権利者の了解を取っておくべきものと考えられます。
- (3) 誰の許諾を得ればよいのか。
- 三谷さんが、権利者の了解を求めるために書面を送られたのは、 適切な対応だと思われます。 しかし、問題は、誰の了解を求めるべきか、という点にあります。
キャラクター商品などの場合は、通常は、模型を作っているところは、 模型を作って売ることについてしか、権利者の許諾を得ておらず、 できあがったものを WWW server を通じて、 一般に公開することを許諾する権限を有しているわけではありません。
これらの権利関係は、若干複雑でもあるので、 本件では、問題となる模型ごとに、 誰の許諾を得ておく必要があるものなのかを、 専門家に分析してもらった方がよいかもしれませんね。
許諾を受けておく必要がある人としては、まず、既に述べたように、 著作権者が考えられますが、プラモデルの場合、 意匠権という権利も問題となる可能性もあります。
この点については、松倉先生に次回にお話ししていただきましょう。