ネットワークは、主としてニフティーサーブを使っていますが、 日本弁護士連合会という弁護士会の親玉みたいな団体のコンピュータ研究委員会という委員会の委員をしているので、 そこの委員会が運営している CC-NET というネットワークも利用しています。
オフィスでは、今や時代遅れの DX2, 66MHz の IBM PS/55(バスが、 IBM 自身にも見放されつつあるマイクロチャンネルなので、 いずれ買い換えなければなりますまい)14,400bps モデム、 六連の CD-ROM チェンジャー、600dpi のプリンタなどをパーソナル用に使っています。 オフィスの他の弁護士や秘書とは、 一応、NetWare v3.11J でつながっています。
それから、自宅用と出張用には、 プリンタ内臓型の Think Pad を使っています (ただし、先日出張に行ったときには Think Pad を持っていったばかりに徹夜で書類を作る羽目になってしまい、これからは持っていくのはやめようと思っていますが…)。
と、このぐらいにして、早急本題に入りましょう。
まずは、インターネットを知ってからまだ半年という学生の松田さんのご質問から (うむ、DJ の乗りですね。ここで、BGM が流れたりすると楽しいですが、 Printed material では難しい)。
まず、著作権について考えてみましょう。
「原則として」と言ったのは、前回 terra が指摘したように、 「公表された著作物」は、「公正な慣行に合致」し「引用の目的上正当な範囲で行われるもの」 であれば「引用して利用することができる」、 というような著作権の制限規定があるからです。
しかし、ご質問のケースのように写真自体が鑑賞の対象となりうるような形で組み込まれる (多分そうですよね)のであれば、 上記の引用に関する制限規定が適用されると考えるのは無理がありそうです。
制限規定には、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的」とする場合は、 原則として、複製してもよいというような規定もありますが、 WWW ページを作ってみんなに見せようとするのは 「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的」 とするとは言えないでしょうから、 この規定を持ち出すのも無理がありますね。
ところで、「複製」という概念は、じつは、 法的にはかなり難しい(というか、ケースによってはかなり議論のある)概念なのです。 その話をしだすと、とても今回だけで回答できなくなってしまうぐらい問題のある概念なのです。
しかし、少なくとも WWW サーバーに記憶させる行為は、 いずれにせよ「複製」と考えられます。
そこで、タレントの写真を使って WWW ページを作れば、 写真家の著作権のうち「複製権」という権利を侵害することになりかねないのです。
著作者には、複製権のほかに「有線送信権」という権利も認められています。 「有線送信権」という権利は、大ざっぱに言うと、 不特定又は多数の人に直接、有線電気通信の送信をすることです。 WWW ページを作って、 不特定又は多数の人が著作物を見れる状態におくことを「送信」といっていいかどうか文言上は問題がないではありませんが、 現在の大方の考え方によると、 WWW ページなどを通じて不特定又は多数の人が、 直接、著作物を見れる状態におくことも「送信」に該当すると考えられているようです。
したがって、ご質問のケースでは、 有線送信権の侵害の問題も生じることになります。
裁判所で問題になった有名なケースは 「おニャン子クラブ事件」と呼ばれるもので、 裁判所は「勝手におニャン子クラブに所属するタレントのプロマイドを販売する行為は、 パブリシティ権の侵害になる」と判断しました。
したがって、ご質問のケースではタレントのパブリシティ権の侵害も問題になってしまうのです。
楽曲は、一般的には歌詞(ない場合もありますが)と曲(旋律ですね)とによって構成されます。 そして楽曲は、一般的には、 音楽の著作物に該当すると考えられますから、 著作物たる楽曲を作った作詞家と作曲家は、 「著作者」として楽曲について「著作権」 (すでにお話しした、複製権とか有線送信権などの権利)を持つことになります。
したがって、 これらの著作者の許諾を得ずにWWW ページ上で楽曲を利用すれば、 著作権侵害が問題となります。
それだけではありません。 CD に楽曲を固定するためには、楽曲を演奏する人 (著作権法上は「実演家」と呼ばれます)と、 演奏された音を原盤 (CD を作る元になるマスターテープのこと)に固定する人 (著作権法上は、レコード製作者と呼ばれています)も必要ですが、 これらの人たちは著作隣接権という権利を持っていて 「勝手に自分の実演を録音するな」とか 「勝手にレコードをコピーするな」などと言えるのです。
したがって、ご質問のケースでは、 これらの著作隣接権の侵害も問題となってしまいます。
こんなに権利があると、じゃあ、 あまりに面倒くさいからあきらめよう、 という気になってくるかもしれませんが、 そうそう短絡的に考えるのはよくないですよね。
面倒な権利処理のステップを踏むことによって、 アイデアも生かされ成果物の価値も高まるというもの。 まず、タレントの所属事務所を攻略して、 協力を取り付けることから考えたらどうでしょうか。
いずれの権利も、 許諾さえあれば利用できるのですから、 問題となる写真や楽曲全てにかかわっているタレントの所属事務所の協力の下で関連する権利者の権利処理 (すなわち、利用許諾を得ること) を進めていけば、打開策も見いだせるかもしれません。
これまでの常識的な考え方からすれば、 タレントの所属事務所にとって商売の種であるタレントの肖像や楽曲を金を払わない人に使わせるということは考えにくいことではありますが、 これだけインターネットの関心が高まっている状況の下では、 タレントの所属事務所としても宣伝効果をねらって協力してくれる可能性もあります。
では、次の質問に移りましょう。 エレクトロニクス関係の会社に勤めているという小糸さんのご質問です。
ちょっと詳しく、ym の考え方を説明しましょう。
その意味で、ご質問の年賀状は作成者の「思想又は感情」を「創作的に表現したもの」と考えられ、 著作物に該当するものと解されます。
若干問題になるのは、年賀状に用いられた壁紙などのデザインが 「実用品の模様などとして用いられることのみを目的として製作されたもの」であって 「著作権法上の保護対象とならない」と考えられないかという点です。
どういうことかというと、著作物かどうかを判断する際の考え方として、 「実用品の模様などのようなものは、本来、工業上利用することのできる意匠を保護する意匠法という法律によって保護されるべきであり、 著作権法上保護するのは適当でない」 という考え方があるからです。
しかし、デザインの使用目的のような主観的な要素によって、 全く同じデザインが著作物となったり著作物ではないことになったりするのは変な話しなので、 ym としては、 上記のような考え方はあまり説得力がないように感じています。
ところで、画像、動画、音声などは、 それ自体独立して著作物となりうるものですから、 ご質問の年賀状は、さまざまな形態の著作物を含むものと考えられそうです。 そして、年賀状を作成するということは、 素材である画像、動画、音声などを組合せて独立した作品を作り上げることを意味するわけですから、 年賀状は、画像、動画、音声などの素材とは別に、 著作物として保護されると考えられるでしょう。
このことは、原作や音楽などの著作物を利用しながら、 映画という独立した著作物を作成することと同様です。
ちまたでは、このようにいろいろな形態の著作物を統合したものを、 映画の著作物とは別に、「マルチメディア著作物」とか 「視聴覚著作物」と定義すべきだとか、 映画の著作物も含むより広い範囲の著作物として 「マルチメディア著作物」とか「視聴覚著作物」と定義すべきだなどというような議論が盛んですが、 名前はどうあれ、いずれにせよ素材とは別の著作物として保護されることは明らかです。
なぜなら、インターネットという環境下で「みんな見てね」 と言って WWW サーバーに年賀状を載せるわけですから「これをダウンロードするのは、 複製権の侵害だ」などというのは自己矛盾じゃないかなという気がするからです。 法的には「年賀状は著作物であるが、その利用については黙示の許諾があるのではないか」 というような問題になるわけです。
もっとも、WWW サーバーに載せられた年賀状を勝手にコピーして、 自分が作ったような顔をして販売したりするような行為まで許諾しているとは到底考えられないので、 黙示の許諾という考え方であらゆる利用形態が許されるというわけではありません。 (ちなみに、勝手に著作者以外の者が作ったような表示をすれば、 著作権とは別に、 著作者人格権という権利の侵害も問題になります。 この点については、次回にお話ししましょう)。
要は、terra も言っていたように、 自分の権利を守るためにコピー禁止の警告もしないで、 後から文句を言うのは、 少なくてもインターネットというオープンな環境で情報の流通をしようとする以上、 問題ではないかということです。